隠れた国産アイテムに名品あり!「黒舟」&「熊に金棒」
海外メーカーがひしめきあうアウトドア業界において、いまや国内メーカーは貴重な存在になりつつあります。さらにその商品が国産となると、探すほうが困難ではないでしょうか。
そんな希少な国産アイテムは、グローバルな争いのなかで生き残っているからこそ、名品と呼べるものが実は多い。以前記事にした「マナスル」もそのひとつ。そして今回紹介する商品もご多分にもれず、自信をもって名品といえるアイテムです。
そんな商品を手掛けているのは、栃木県鹿沼市に工場を構える大森鋳造所。ビッグフォレストというブランド名で、「グリルプレート 黒舟」と、熊除け用の鈴である「熊に金棒」を製造しています。
まず紹介するのは「グリルプレート 黒舟」。近年人気が高まっているソロキャンプで売り切れ続出中のヒット商品です。いままでなかった、本格的な一人焼肉用プレートということもさることながら、コンパクトで軽く、さらに香ばしい焼き目をつけながら贅沢にステーキを調理できる点も、多くのキャンパーを魅了して止まない個性的な特徴といえるでしょう。
さらに、さまざまなメーカーのソロ焚き火台にフィットすることも、その人気を後押ししました。
もちろん黒舟はアウトドアシーンだけに限らず、自宅で使用することもできます。ガスコンロに乗せて火にかけると、素材がアルミだからこそ素早く熱が回り、あっという間に適温になりました。
さっそくステーキを乗せると、ジューッという高音の焼き音が。これだけでも食欲がそそられますが、タイミングをみてひっくり返すと、刻印された焼き目がさらに胃袋を刺激します。牛肉が焼ける香ばしい匂いも漂ってきて、もう待ちきれない!
一秒でも早く食べたいのはやまやまですが、弱火でじっくり焼くのが柔らかいステーキをいただくコツ。頃合いを見計らい、まな板の上に移して切り分けると、中はしっとり外はこんがりの焼き上がりで、口に入れるとジュワーッと肉汁が広がりました。
こんな美味しいステーキをいただける黒舟をアウトドアシーンだけで使うのはもったいないですね。
さらに火を止めてしまえば冷めるのも早いので、撤収もラク。表面はテフロンコーティングされているので、柔らかいスポンジでサッと擦るだけで焦げを落とすことができました。この扱いやすさには脱帽です。
ちなみに黒舟には兄弟のような商品があり、周囲に油を落とす溝を設けた「かるpan〜かる〜」や、まったく新しい商品も現在進行系で企画中といいます。
そしてもうひとつの名品が「熊に金棒」です。こちらは黒舟よりも5年ほど前に発売を開始した、ビッグフォレストの第一号商品。かれこれ15年以上姿を変えずに愛され続けている、ロングセラーの熊鈴になります。
その人気の理由のひとつが、鈴の音を止めることができる消音機能にあります。ねじ込み式になっている熊の顔を回すと振り子が引き上がり、音が鳴らなくなる仕組みです。
いまでこそ珍しくなくなりましたが、発売当初は消音機能を備える熊鈴は存在しておらず、画期的な特徴として市場を席巻しました。
そしてもうひとつの理由が、まるで風鈴のような涼しい音色にあります。クリアで優しい音は商品ひとつひとつによって違いがあるのですが、その秘密は後に紹介する工場見学の様子で明らかにするとしましょう。
熊に金棒はいまではシリーズ化されていて、ひとまわり小さくした「子熊に金棒」や、フック部分に牛革を使用した「熊に金棒DX」と「子熊に金棒DX」など、いくつかの種類から選ぶことができます。
黒舟は約10年、熊に金棒にいたっては15年以上もデザインを変えることなく、市場で一定の地位を確立し続けています。類似品を発表するメーカーも多いなか、廃れることなくシェアを維持し続けているこの事実は、まさに名品と呼ぶにふさわしい実績ではないでしょうか。
そんな両者は、冒頭で紹介した大森鋳造所という会社で製造されています。デザインが大きく異るので、一見するとまったく別のラインで作られているように思われますが、実は製造工程はいずれも同じ。溶かした金属を型に流し込む「鋳造(ちゅうぞう)」という加工方法によって生み出されています。
この「鋳造」という方法はなんとなくイメージできるのですが、実際の現場ではどのような作業が行われているのでしょうか。そこには昔ながらの工法で商品を作り続ける、熟練の職人たちの姿がありました。大森製造所を訪れた工場見学の様子は、後編に続きます。
山岳ライター吉澤英晃が、アイテムを実際に使ってみてレポートする連載企画。
登山からキャンプギアまで様々なアイテムの使用感や特徴を紹介していきます。(構成・文:吉澤英晃)
【自己紹介】
大学の探検サークルに入部したのことをきっかけに登山を開始。
社会人山岳会に所属し、夏は沢登り、冬は雪稜からバックカントリーまで、一年中山で遊んでいる。
登山用品の営業職を経験した後、現在はフリーライターとして活動中。