3種の火起こしギア。 ファイヤースターターを検証してみた!
● ガスライターより役に立つ? 面倒でも頼れる着火道具
いまやガスライターのボタンをカチッと押せば、いとも簡単に火が手に入る便利な時代。それなのに、アウトドアギアの中でいまだに一定の地位を得ている手間のかかる着火道具があります。
それが今回の記事のテーマである
「ファイヤースターター」です。
ファイヤースターターとは、高温の火花を摩擦によって発生させる原始的な道具のこと。
昔話などに出てくる火打石を現代風に改良したアイテムといえば分かりやすいでしょう。
火花を飛ばす作業が少々面倒ではあるものの私は絶賛ファイヤースターターを愛用中。それはなぜか? ずばり、故障する心配がないからです。
普段の山登りでは点火装置が付かない小型バーナーを使っていて、長い間ガスライターを一緒に持ち歩いていました。ただ、低温下では火がつきにくくなったり、本体が透明でないとガスの残量が分かりにくかったり、不満な点も。
そこで、あるときピンときたのがファイヤースターターです。これなら気温が低くても安定して火花を飛ばせるし、 消費具合も一目瞭然。さらに、雨などで本体が濡れてしまっても問題なく使えます。
少しの手間さえ我慢すれば、ファイヤースターターは全方位に弱点がない万能な着火道具といえるのでは?
そう思い始めるといてもたってもいられなくなり、取材帰りに立ち寄った都内の山道具屋でさっそく購入。以来、小型バーナーの収納袋にはガスライターの代わりにファイヤースターターが居座るようになりました。
● SOLでは2種類のファイヤースターターを展開
とても優秀なファイヤースターターは、大きく2つのタイプに分かれます。
もっとも一般的なものは、フリント(火花を発生させる金属製の棒)をストライカーと呼ばれる金属の薄い板で削って火花を飛ばすタイプです。私の愛用品もこれになります。
もうひとつは、円盤状のヤスリを内側にあるフリントに押し当てながら回転させて火花を発生させるタイプになります。フリント式と呼ばれるガスライターの点火メカニズムが、まさにこれです。
そして、スター商事が扱う<SOL(エスオーエル)>は、両方のタイプのファイヤースターターをラインナップ。品揃えの良さは、さすがエマージェンシーグッズ専門メーカーといえるでしょう。
どんな特長があるのか、ひとつずつ紹介します。
1.マグストライカー
サイズ比較用のスマートフォンは、iPhone SE 2
サイズ:13.5×直径2.5cm
重さ:80g
こちらは一般的な棒状のタイプ。黒いフリントの後ろには火種用のマグネシウムが付属します。紐は火花で点火できるティンダーコード。ストライカーには栓抜きと5cmの目盛りが付いています。
サイズ:6×1.2×1cm(1個)
重量:8g(1個)
※実際の商品には本体が2つ入ってきます
これは円盤状のヤスリを回転させるタイプのファイヤースターター。サイズが小さいので使用できる回数が気になりますが、最大で約5,000回も火花を飛ばせる優れもの。1個8gと軽量なので登山にも気軽に持ち出せます。
\ SOLのファイヤースターター+αを実際に使ってみた! /
意外と役立つファイヤースターターですが、たったひとつデメリットが。シンプルな道具ではあるのですが、扱いにはちょっとした慣れが必要なんです。
事実、私が持っているファイヤースターターの使い方を山仲間に教えても、一回ではうまく火花を飛ばせません。コツを掴んで使えるようになる人がいる一方、使うのが難しい道具というレッテルを貼り、二度と手にしない人もいるほどです。
では、SOLから発売中の2つの使い勝手はいかがなものか。点火テストで扱いやすさを検証してみました!
▼ マグストライカーの使い方
1:スクレーパー(ストライカーのこと)の短辺にあるギザギザの部分でマグネシウムを削って削りくずを作ります。
2:スクレーパーをフリントにあてて強くこすり、火花を出してほぐした木の皮に引火させます。
(動画ではフリントをスクレーパーのギザギザの部分でこすっていますが、側面を使ってもOKです)
感想:
最初はフリントから上手に火花を飛ばすことができず、 少々手間取ってしまいました。用意があればナイフの背で削る方が火花を発生させやすいかもしれません。とはいえ、他の商品とは違うストロングポイントも。
動画では少々分かりにくいですが、ほぐした木の皮が燃えるよりも前にスクレーパーで削った削りくずに火花が引火しています。これがマグストライカー最大の特長。一般的なファイヤースターターは火種となる固形燃料や ジェルを用意する必要がありますが 、 マグストライカーはその役目をマグネシウムの削りくずが果たします。
▼ ファイヤーライト マイクロスパークの使い方
1:本体を中指と親指で挟んで持ちます。
2:人差し指でヤスリを弾くように回転させて火花を飛ばします。
(※ヤスリを回転させる方向が決まっています。本体先端にある矢印に従いましょう)
感想:
マグストライカーと比べると最初は扱いに戸惑ったものの、慣れてしまえば簡単に火花を飛ばせるようになりました。ヤスリの深くに人差し指を押し当てて、硬い糸を弾くように力強く回転させると上手くいきます。
\ <ペトロマックス>ファイヤープランジャーも使ってみた! /
ファイヤープランジャーはスター商事のネットショップだけで手に入る限定商品。右が銀プランジャー、左が黒プランジャー。銀プランジャーに黒プランジャーをかぶせて火口を作る
サイズ:19×10×4.3cm
重量:82g
スター商事が取り扱うペトロマックスにも、一風変わった着火アイテムがあります。これまでに紹介したアイテムは高温の火花を飛ばすタイプでしたが、このファイヤープランジャーは空気を圧縮して火口に点火するという珍しい仕組み。せっかくなので、こちらの使い勝手も試してみました!
5:銀プランジャーにかぶせた黒プランジャーを垂直に勢いよく押し下げて、チャークロスに点火させます。
6:点火したら別のチャークロスに火を移します。
7:火口のチャークロスを裂いた樹皮の中に入れて息を吹きかけ引火させます。
感想:
今回試した中でもっとも扱いが難しく、 私は最後まで火を付けることができませんでした……。ただ、とっても面白い道具なので、いとも簡単に扱えるようになったらアウトドアシーンで一目置かれることは間違いなし。
もし火口が上手く作れなくても、銀プランジャーの内側には棒状のフリントが付属しているので、ほかのタイプと同じく火花を飛ばすことも可能です。
● 着火テストを終えて
持ち運びやすさと扱いやすさで考えると、登山やキャンプなど普段のレジャーで使いやすいのは「ファイヤーライト マイクロスーパーク」といえるでしょう。
ただ、本当の緊急時に火を起こすことを考えると、火種になるマグネシウムが付属する「マグストライカー」に分があります。そのため、たとえば防災用にファイヤースターターを準備するとしたら、マグストライカーが一押し。少々使いこなすのが難しいですが、火種が付属する点では「ファイヤープランジャー」もおすすめです。
今回の記事が参考になったら、ファイヤースターターを手にとってみてはいかがでしょう。ガスライターが壊れた、もしくは濡れてしまったときなど、心の底から「持っていて良かった」と思える優秀なアイテムです。
山岳ライター吉澤英晃が、アイテムを実際に使ってみてレポートする連載企画。
登山からキャンプギアまで様々なアイテムの使用感や特徴を紹介していきます。(構成・文:吉澤英晃)
【自己紹介】
大学の探検サークルに入部したのことをきっかけに登山を開始。
社会人山岳会に所属し、夏は沢登り、冬は雪稜からバックカントリーまで、一年中山で遊んでいる。
登山用品の営業職を経験した後、現在はフリーライターとして活動中。