STAR CHANNEL
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救急救命士
常に準備を怠らない。
だから救える命がある
山形県尾花沢市消防本部
右:庄司俊之さん 救急救命士/救急係長
左:生田直也さん 救急救命士/消防士
救助現場から病院へ。傷病者の手当や応急処置を施す救急救命士は、命をつなぐ責任ある仕事。その判断や用意する医療資機材によっては、傷病者の生死を分けることも。救急・救助・消火などの職務を兼任する生田さんは「常に万全の体制を保つことが大切」と話します。
更新:2023.09.01
― スター商事(以下同):尾花沢市消防本部にはどのような救助要請があるのでしょうか。
生田(以下同)
「雪とスイカと花笠のまち」として知られる尾花沢市は、国内有数の豪雪地帯です。冬季は雪や寒さに起因する要請が多いですね。市街地では毎年落雪事故がありますし、スキー場やキャンプ場のある山間部では観光客の怪我や遭難が発生します。
また、遊びの範囲が広がってゲレンデのエリア外でのスキーやスノーモービルなどを使う方が増えたためか、最近は山間部での傷病人が目立ちます。駆けつける現場の環境は千差万別です。あらゆる119を想定し、隊員配備や救助訓練、医療資機材の備えなどが求められます。
― 冬季はどのような準備をするのですか?
現場ではとにかく保温が大切です。どれだけ早く適切な保温処置を行えるかどうかで救命が左右されるからです。傷病者の身体は冷え切っています。保温処置に適した装備のひとつが、身体に巻く救急用ブランケットですね。
訓練は主に雪山で実施します。ダミー人形に素早くブランケットを巻く方法や、ストレッチャーに固定する作業を繰り返して身体で覚えます。
一刻を争う救助現場で必要な技術や装備の基本などを日々の訓練で身につけています。
― 2021年11月から、救急の医療資機材にSOLのエマージェンシーブランケットを導入しました。
はい。これまでは使い捨てのアルミ製シートを使用していましたが、いざという時に簡単に破けたり裂けたりして困っていました。
SOLのエマージェンシーブランケットに切り替えたことで、断然活動しやすくなりましたよ。毛布代わりにポケットに入れておけるサイズで、かさばらなくて手軽なところが気に入っています。
そして何より驚いたのが丈夫で破けにくいこと。使用素材のポリエチレンはアルミよりも耐久性が高く、現場で安心して作業できます。力を込めてブランケットを広げて、引っぱって、傷病者の身体に密着させられるんです。
傷病者の身体は冷え切っているため、現場に到着したらまず身体に巻き付けます。救急車が到着するまでの間、いかにして体温を温存できるかが救命の鍵です。
― 救急車内でもブランケットを使用するのですか?
もちろんです。まずは衣類をすべて脱がせます。救急車の中では、冷たく濡れてしまった衣類の上からブランケットを巻いていても、熱の発生源を奪ってしまって意味はないでしょう。“体温を逃さない”というSOLのエマージェンシーブランケット最大のメリットを活かすための判断です。
また、軽量コンパクトなのは現場で重宝しますね。耐熱性を高めるには生地に厚みをもたせる必要がありそうですが、SOLのブランケットは保温性がありながら、薄くて軽い。
最近は消防車に積む酸素飽和度チェック計、血圧計、体温計、心電図、AEDなどの医療機材もコンパクト化が進んでいますから、救急用ブランケットもやはり軽くて小さい方が助かります。
― 結露はどうですか。ブランケット内外の気温差で内側に結露が発生することはないのでしょうか。
病院へ到着するまでの間、処置をしながらブランケットにくるまってもらいますが、少なくともこの冬に結露が問題になったことはありません。外気と差がないほど体温が低下してしまっているからかもしれません。低体温症への対処は体温の低下を防ぐこと。結露を考慮するよりも、保温に特化したブランケットであるほうが現場で重宝します。
― ちなみに、袋状(ヴィヴィタイプ)の二人用も用意しています。
低体温状態の傷病者と私たちが一緒に袋に入って、熱を分けるという使い方ができそうですね。ただ、救急救命士の現場ではシートタイプが使いやすいと判断しています。袋状ですと傷病者を持ち上げなければならないためです。
救急救命士にとっては、傷病者をできるだけ動かさないで手当てを優先する。これが大前提なのです。
― 個人でできる防災への備え、心構えはどのようなことがありますか。
日常生活の中で防災グッズを使ってみたり、防災知識を高めたりできるといいですね。高性能な道具を潤沢に揃えても、使い手の技術や知識が伴わなければ現場で活用できませんから。
災害を対岸の火事と捉えずに、自分ごとと認識するのも大切です。例えば、街中で目の前の人が倒れたらあなたはどのように行動しますか? 自分は何ができて何ができないのかを把握し、足りないところを補えばいいのです。もしもの時は、今この瞬間に発生するかもしれません。有事は日常の中にあると捉えて行動できるといいですね。
また、AEDの知識を高めることも重要です。消防には多くの通報が寄せられますが、隊員や救急車の数には限りがあります。私たちがいくら急いでも、傷病者の方に最も近いのは通報者です。あらかじめ応急処置の手法や知識を持っていれば、慌てずに対処できます。
あなたの対応が傷病者の生死を分けるかもしれません。もしもの時は必ず来ると思って、日ごろから防災や救急の準備をしておくことが大切です。